すこやか通信vol.01

※2020年1月に発行された記事です。

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防災の観点からも病院と文コンはベストマッチ

清元
大勢の市民の皆さんからご支援いただいて市長に就任してから早8カ月が経過しました。同時に石見前市長もご勇退されて同じ月日が経ちました。石見前市長には市政へ大所高所からご意見をいただくために市の参与に就いていただくとともに、生涯学習大学校の名誉学長としてもご活躍いただいているわけですが、どのような毎日を過ごされていますか?
石見
生涯学習大学へは月曜と金曜に出勤しています。ここの授業は非常に面白いので、私もここで得たヒントが市民のニーズに応える重要な施策に反映できるんじゃないかと、いつも考えを巡らせていましてね。それに時々、特別講義もさせてもらっているんです。空きの火水木曜はこれまで疎遠になってきた皆さんとの交流に充てています。「市長を辞めたら陶芸と農業をやる」と言っていたんですが、これがなかなか大変で、腰を据えて取り組むところまで至っておりませんで…。普段から結構街に出ているんですよ。 清元市長は市長になられて、どのような感想を持たれていますか?
清元
現時点では正直申しまして、石見市政の事業を完遂すべく前進するのが精一杯というところです。令和元年度の事業はほとんどが石見市政からの継続案件ばかりなので、まだ何の独自性も出せていないなと思っています。
石見
それでも夏には庁舎の空調設定を28度から25度に下げて、全国的にも大きな話題になりました。この発想は今までにはなかった事です。
清元
ありがとうございます。これは、市役所の温度を下げれば職員の作業効率も上がるんじゃないかと考えて始めたプロジェクトなんです。実は、この検証結果を今年の夏に子どもたちの教育環境の改善に繋げたいと考えています。 さらにその延長線上なんですが、今度は学校トイレの洋式便座化とドライ化についても取り組み始めています。入学したての児童が「和式のトイレが恐い」と言って学校に行くのを嫌がるとか、学校が避難所になった時には特に女性が「和式は苦手」という事をおっしゃるので、市立小中学校を洋式化していこうと国の予算獲得へ動いているところです。 このような施策へ手が打てるのも、石見市政が小中学校へのエアコン設置の予算を真っ先に付けてくださったからなんですね。非常に補助金率の高い予算を国から取ってきていただいた。
石見
やはり、行政は継続性が大事なんですね。私が市長に就いた時、一番気を付けたのは、市長が変わったからと言って政策をコロコロと変えては絶対にいけないという事。前市長が残されたいろんな政策を全部踏襲したんですね。私は16年間やってきたので、踏襲していただく事が結構多いと思いますから、よろしくお願いしますね。 ただし、清元市長は医療や福祉、教育の専門家です。これから一層拍車がかかる長寿社会で思う存分本領を発揮してください。ちょうど今、イベントゾーンでは兵庫県で一番大きな新県立病院が建設中ですから。
清元
イベントゾーンを教育や産業の振興に繋げていくのは当然なのですが、私は文化コンベンションセンター(文コン)の横に市民の命の〝最後の砦〞となる医療拠点を持ってきたという事は石見参与の大英断だと思っています。 というのも、私が石巻市で経験した事なんですが、大規模災害時には病院の収容人数を超えて皆さんが押し寄せてきます。すると、結局は駐車場に大きなテントを建ててトリアージポスト(治療前に負傷者の重傷度・緊急度を判断する場所)を構える事になるんですね。ところが、この文コンがあるので、患者さんたちが場合によっては夜を明かさないといけない時には非常に助かるのです。
石見
収容能力を補完できるのは私も良かったと思います。それともう一つ。病院滞在中のクオリティ・オブ・ライフ(QOL=生活の質)の事も考えたんですよね。治療の合間に音楽を聴きに行ったり展示会を見に行ったりして心の平穏を保ってもらえると。そういう事もちょっと考えました。
清元
新県立病院は3次病院ですので、在院日数は恐らく2週間を切りますから、患者さん自身はなかなか行く時間がないかも知れませんが、看病して気持ちが落ち込んでいるご家族の方々がふっと行ける場所があるという事は重要かなと思いますね。病人も大事ですが、看病する人を癒やすのも病院の大事な機能なんです。 もう一つ、大規模災害の被災地にはありとあらゆる支援物資がどーんと送られてくるのですが、それらを仕分ける作業場も必要になるんです。姫路の新県立病院と文コンは駅の間近に建つわけですから、鉄道が動きだせばすぐに支援物資も集まるし、播但線や姫新線に乗せて効率的に配達する事もできると。まさに防災機能の観点から言っても病院と文コンは最高の組み合わせだと思うんですね。
石見
今後はこの病院と文コンを中心に市民のQOLを高めていく事が市政の至上命題になります。ですから、このタイミングで清元市長が実現したという事は姫路市にとって本当にラッキーだと喜んでいます。
清元
ありがたいことです。病院そのもののは神戸大学が中心となって運営していきます。じゃあ、市に何が求められているのかと言うと、最も重要なのは人材育成なんですね。どんな最新鋭の設備を持った病院でも段々と古くなっていきます。だから私たちは、次の10年先、さらにその次の10年先を見据えて、その時代、その地域に必要となる医師や看護師、薬剤師、検査技師たちをいかに育成していくか、だと思うんです。
石見
まさにイベントゾーンの最初の目的である医工の連携が始まる。それが新しい産業の創出にも繋がり、その新産業で医療福祉を向上させていく。このグランドデザインを着実に遂行していってください。
清元
はい。石見市政が道筋を付けられた医療系高等教育・研究機構を県、獨協学園と一緒になってしっかりと発展させていく決意です。 ところで文コンは早くも鉄骨が組み上がってきましたね。完成が楽しみです。オープン後の姿をどのように思い描いていらっしゃいますか?
石見
そうですね。これは私が大学教授時代に実施した調査なんですが、毎日をのんびりと暮らしている人と忙しく過ごしている人、いずれも65歳以上の方を対象にどっちが幸せなのか「幸せ度」を計算してみたんです。すると、多忙の方が圧倒的に幸せだという事が分かりまして。ですから、市長になってからは事ある毎に〝全員参加〞を提唱してきたんです。つまり、市民が公民館活動や生涯学習活動にどんどん参加するような仕組みを自治会を中心につくっていったんですね。 その効果もあって皆さん、絵や字を習ったり、焼き物をしたり、歌を歌ったりと活動も段々と活発になっていったのですが、やっぱりこれは密室で黙々とやっているだけではアカンのですよ。大人にも発表の場を作っていかなアカン。という事で、文コンでは高尚な文化イベントもやっていただくのですが、市民の発表の場としてもとことん活用してもらいたいという希望を強く持っています。
清元
公民館活動は大事ですね。私も時間がある限りなるべく色々な活動や発表会を観て回るよう努めているのですが、驚くべき才能をお持ちの方が沢山いらっしゃいますから。石見参与がおっしゃるように、生涯現役で文化活動を続けている方々は、数年ぶりに出会ってもあまり老けてないんですよね。〝全員参加〞は大賛成です。
石見
私は生涯現役の理想を正岡子規に求めたんですよ。カリエスで寝たきりの状態でありながらも弟子や夏目漱石に色んな指図をするんですね。死の直前まで創作活動に意欲を燃やした。だから、「健康を害しても生涯現役はあるんやで」という事を言いたいんです。
清元
私の友人に〝笑い療法士〞という医者がいるんです。彼は癌の末期患者でもお笑いを観に行かせたりするんです。人は面白い事を観たり話したりして笑うと、明らかに血液中のナチュラルキラー細胞と言って、癌を食べにいく免疫細胞が増える事が医学的に分かっているんですね。だから、笑ったり歌ったり、楽しくみんなで会話したりというのが大事なんだという事はまさにその通りだと思いますね。
石見
そういう科学的実証実験もぜひ姫路で。「国民の幸せのために、こんな新しい実験をしたい」と熱意を訴えれば、厚労省も補助金を出してくれるんじゃないかな。
清元
昨年9月から厚労省から市の医監としてキャリアの方に来ていただきました。国と連携して研究してみます。医監は基盤研究分野や国際部門を担当されたり、新潟県の副知事も経験されているくらいの多才な方なので、そういった人脈も使わせていただきながら種を蒔いていきたいと思います。

「天地人」の総合力で播磨のリーダーに

石見
私も市長になった頃は国の補助金を取りまくりました。初めは「姫路だけそんなに取って良いのか、平等であるべきじゃないのか」と自問自答したのですけれど、やがて「それは違う」という結論に達しましてね。各自治体が頑張って補助金を取り合いして、そのためにとことん知恵比べした結果が、結局は国全体に波及する。だから姫路ももっと知恵を出して、国に「それは面白い!」と思わせるような補助金を獲得していってください。
清元
つまり、新しい事業のモデル都市になるという事ですよね。それに関して、私も就任以来何度も国交省へお邪魔しているんですけれど、石見参与が凄かったなと思うのは、国交省の幹部が口を揃えて「姫路の駅前は素晴らしい。ウォーカブルな(居心地が良く歩きやすい)街として日本中のモデルにしています」と言うんですね。ウォーカブル推進都市の最先端事例に姫路が紹介されているんです。 この事を厚労省で話したら、強く関心を示してくれまして。なぜかと言うと、少し前までは食べるばかりで運動しなければメタボになったり、ロコモティブ症候群といって関節が痛くて動けなくなると言っていたんですが、最近はそれに加えてフレイルといって、歩けなくなると途端に認知機能が下がるという事を指摘し始めたんですね。だから〝歩く〞という事を一番に推奨しているんです。
石見
姫路は駅からお城まで800㍍。人は500㍍位なら難なく歩きますが、800㍍になると少し頑張らないと。今度の病院も800㍍。姫路は歩き回る街という事を都市計画の基本にずっと考えていましたので、ちょうど良いですね。 私は大手前通りを「あれは道路と違うで、公園通りやで」という意識で整備したんです。だからスタスタ通り過ぎるんじゃなく、寄り道をしまくって歩くというような道にしたいんですね。オープンカフェやレストランが広まれば良いのですが。
清元
清元 駅からお城まで続く通りはまさにエモーショナル。やはり歩いても店が少ないと寂しいですよね。だから「目指すはシャンゼリゼ」をコンセプトに、商店街の人たちで立ち上げた大手前通り活性化協議会にいろんなワゴンやお店を出してもらう「ミチミチ・プロジェクト」という社会実験を昨年11月の1カ月間実施したんです。これを5カ年計画で続けるのですが、官が主導すると一過性のイベントで終わってしまう事が多々ありますので、民の参加に対して官が強力に応援するという形に持っていきたいと考えています。この間に商店街の皆さんには観光で儲ける体制を整えていってほしいと願っています。
石見
おっしゃるように役所が実施したら単なるイベントで終わってしまう。ビジネスに繋がってこそ魅力的なストリートが完成するんですよね。最後はビジネスに繋げなアカンと私も思っているんです。その辺りの事は私もあまり上手くできていませんでした。行政は条件整備をした上で、実際にそこでビジネスを展開してくれる皆さんとタイアップする、そういった協力体制がちょっと弱かったですね。これからよろしくお願いします。商店街の皆さんには商売に抜け目なく便乗していただきましょう。
清元
観光振興にも関連しますが、コンウィ城との姉妹城提携についてお礼申し上げます。石見市政でしっかりと仮調印していただいたおかげで、先日ウェールズに渡って本調印をしてくる事ができました。コンウィ城という文化を守ってきた人たちと播磨の文化の象徴である姫路城を守ってきた我々が世界遺産という共通点で繋がったという事で、姉妹都市という従前の漠然とした付き合いでなく、もっと深い文化や観光ツーリズムに対する国際交流の絆が生まれたなと感じています。
石見
私もコンウィに行った時には「お城を縁に市民交流をやりましょう」と言われて嬉しく感じました。それで「子どもたちの交流をやろう」とも言ってくれたんです。
清元
現地の市民と話すと、姫路市民と同じですね。そこにお城があり、伝統文化を守ってきた事に誇りを持っている。姫路城があるから姫路の街並みをきれいにしていこうとか、次の世代に繋いでいこうという気持ちがコンウィの皆さんにもあるんですね。そういう気持ちを軸に、これから中高生も含めてお互いの歴史を学び合い、草の根交流へと発展させていければと願っています。
石見
私が市長に初当選した頃はちょうどJR姫路駅の高架化が完成しようという時期でした。それが完成すると今度は播磨全体を元気にする大きな枠組み、8市8町の播磨圏域中枢都市構想に注力してきました。これからは、いよいよそれに血を通わせ、肉を付けていかねばなりません。要するにソフトウエア、人材育成が望まれるという時に清元市政を誕生させたという事で、市民の皆さんの選択に改めて感謝します。 清元市長にはこれまでの専門を活かして、8市8町の先頭にも立っていただきたい。地方分権時代という〝天の時〞、世界から脚光を浴びる城があるという〝地の利〞、そして最後に優秀な3800人の職員という〝人の和〞がある。3つの条件が揃った総合力でもって、歴史ある播磨の発展の中心として頑張っていただきたい。
清元
温かいお言葉をありがとうございます。姫路市民のために頑張るのはもとより、「姫路ナンバーを付けている車が走っているエリアはみんな仲間や」という意気込みで挑戦していきます。姫路市政を16年間担ってこられた石見参与から「これはこういう経緯で、こんな事もあるんやで」と助言をいただけるのは本当に幸せな事。これからもよろしくお願い致します。本日はありがとうございました。
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